2010年に施行された「公共建築物木材利用促進法」は、日本の建築界にコンクリートと鉄の時代から木材の活用へという大きな流れを生み出しつつあります。
これまで住宅分野が中心であった木材の利用を公共建築物にも拡大させることにより、国産材の利用促進や地域の林業振興、また、環境・エネルギー面では、資源浪費的なあり方から持続可能な建築への脱却など、数々のメリットがあり、これまでの建築の前提や日本の建築そのものを大きく変える可能性を持っています。
しかし、木造のみで大型の建築物を構築しようとすると構造・防火面から大きな制約を受けることも現実。木の弱点を他の素材で補いつつ、これからの建築に「木」を適切に賢く取り込んでいくためには様々な知識が必要になります。木とコンクリート・鉄、伝統と現代、アナログとデジタル、柔らかさと強さ、一見相反する異質なものを統合し、適材適所を実現させることで「新たな価値=ハイブリッド」として生まれ変わらせる知恵が、いま、求められています。
2012年末、当社では、自社社屋ショールームの建築に「木造SE構法(ハイブリッド木造)」を採用し、自社設計施工により竣工いたしました。燃え代計算によって可能になる木造躯体露出の60分準耐火構造、許容応力度計算による高い耐震性能(耐震等級3)の実現など、新しい技術の採用や、コンクリート・鉄など異質な素材を構造部材やデザイン要素に取り入れた、ハイブリッド木造ならではの建築であり、微細ながら木造建築の可能性を示す一つのモデルケースになればと考えています。